飲食店経営2006年4月号掲載

浅尾 貴子 さん

【略暦】
1992年 大妻女子短期大学部卒業。栄養士免許取得。
1994年 日本電気(株)に栄養士として勤務しながら、JFCSに入学。
1995年 JFCS卒業と同時に退社し、在学中に料理雑誌のメニュー作成等担当。
1998年 (株)ダイエー入社。商品企画室にて惣菜を開発。
2000年 (株)ロックフィールド入社。 商品企画を担当。
2002年(株)サザビー入社。メニュー企画開発を担当。
2005年日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)入社。商品開発を担当。


今回登場していただいた浅尾貴子さんは、フリーランスのフードビジネスコーディネーターを経てダイエーに転職。デリカ部門で商品開発を担当して2 年半がたったころ、中食大手のロック・フィールドからスカウトの声が掛かった。ダイエーでもまだ手掛けていた分野はあったが、かねてから同社の企業姿勢に 共感していた浅尾さんは決断、活躍の場を移した。

ロック・フィールドに移籍した浅尾さんは、メイン業態であるRF1の主にサラダなどのパック商品の商品開発の担当をした。
「お客さまがその場で手に取って購入できるパック商品に、ロック・フィールドがちょうど力を入れようとしていた時期で、その商品開発を担当しました」
そこで経験を積み実績を認められた浅尾さんはサザビー(現サザビーリーグ)に移る。そこでは新たに事業展開することになった和カフェ「SADEU」の立ち上げにかかわることになった。
同社では和業態は全く初の試みだったこともあって、業態開発では商品開発プロジェクトの責任者として、商品開発だけでなく店舗運営からマネジメントまでを担当、毎月休む余裕もなく立ち上げに走った。

そして、2005年2月からは日本ケンタッキー・フライド・チキンのピザハットマーケティング・R&Dユニットに籍を置き、東京・王子にあるカーネルセンターのテストキッチンで宅配ピザチェーン「ピザハット」の商品開発に専念する毎日を送っている。

「粉からスクラッチで作る生地の開発やピザのトッピング、チーズの商品研究、メイン からデザートに至るメニュー開発まで、これまでの経験を生かしながら担当しています。それらに加えて商品試作、取引先メーカー担当との商談、チームミーティングというのが現在の仕事のサイクルです」
昨年末には「冬のごちそうにピザ」と銘打って「カニエビクイーン!」「黒トリュフ・ターキー」「海鮮うにらんまん」の3品を開発し、販売に踏み切ること ができた。これらは既存アイテムにはないリッチなテイストを打ち出した商品として、顧客の反応も上々だったという。常に、自身の能力を最大限に商品の開発 に投入してきた浅尾さんの一番新しい成果である。

フードビジネス業界の名だたる企業を舞台にマーチャンダイザーとして実績を挙げ、活躍の場を広げる浅尾さん。しかし、その雰囲気はとても穏やかだ。 スタッフとのコミュニケーションを大切にして、担当する仕事を円滑に進めることに気を配る。同時に、管理栄養士、調理師、ワインアドバイザー、惣菜管理 士、産業栄養指導し、フードビジネス・コーディネーターなどの多才な顔を持つ。

「電機メーカーの栄養士として就職した時、与えられた場所でより良い仕事をするにはと考えた結果が管理栄養士の資格取得でした。他の資格も、どれも仕事をする中で必要があって取得していったものです」
ジャパン・フードコーディネーター・スクール(JFCS)についても同様で、栄養学というとらえ方だけでなくさまざまなフィールドをアプローチしたいという気持ちをもつようになり、入学を思い立った。
在学中から始めたフリーランスのフードビジネスコーディネーターの仕事。知人の紹介で女性誌などでレシピ作成の仕事を始めた。仕事は順調で、そのまま続け ていこうと考えたが、続けているうちに「実際にお客様に食べてもらえたり、反応が感じられる仕事をしてみたいと考えるようになりました」という。
料理というものは、作り手と食べ手がいて初めてコミュニケーションが成り立つもの。自分が作った料理を口にしてもらいたい、そして喜んでもらいたい。雑誌での仕事経験を通じて、次第に企業に所属して商品開発をしたいと考えるようになった。

そして、知人を介して入ったのがダイエーだったのだ。
「時々ダイエーに行くのですが、自然と惣菜売り場に足が向いてしまいます。そして、自分が開発した商品が現在でも定番商品として並んでいるのを見ると、少しでも会社に貢献できたことをうれしく思います」とマーチャンダイジングの仕事の魅力に触れる。

そんな浅尾さんに今後のビジョンについて語っていただいた。
「会社での商品開発の仕事と並行して、4月からは大学院で経営戦略、マーケティング、会計、ファイナンス、組織などの企業経営について幅広く学びます。大学院進学を志望した理由は前職で商品企画開発チームのリーダーとして、事業計画やブランド設立、ビジネスモデルの思案等の経営に関わる仕事をしていたこと がきっかけです。商品は会社の利益を左右しますし、方向性や販売方法、サイクルに至るまでが結果に直結するため、それを包括的に解決していくことがこれか らの私の課題であり、現在最も関心のある分野です」
(藤生久夫)