飲食店経営2006年8月号掲載

瀬川 大地 さん

【略暦】
1980年宮城県生まれ。東京農業大学応用生物科学部栄養科学料在学時から、大学近くにある定食屋チェーン大戸屋の経堂農大通り店にてアルバイト。在学中に調理師免許、卒業後に栄養士の資格を取得する。2002年春よりジャパン・フードコーディネーター・スクールに入学し、飲食ビジネスに進む糸口を探す。(株)くふ楽が実施するインターンシップ制度に応募し、グランドメニューの改定と各店舗の食材仕入れの一括化を進める大役のプロジェクトリーダーに。同社の企業コンセプト感銘を受け、05年11月に正式入社。現在外食事業部でメニュープランナー兼フードコーディネーターとして活躍する。


 テレビの料理番組で目にしたさまざまな料理が、実際に食卓に上る楽しい食事の思い出。瀬川大地さんは、仙台の実家でそうした心豊かな少年期を過ごした。そんな家庭に育った子どもが食べること、料理を作ることに関心を持たないはずがない。小学校高学年になると、同級生を誘って実習室で料理を作って遊んでいた。中学、高校に上がってもその興味は衰えるどころかさらに強くなっていた。

「高校に入学してからも将来は調理師になるものと決めて、調理師学校に進むつもりでした」

ところが、両親から大学に進学して視野を広め、調理師になるのはそれからでも遅くはないだろう諭される。そこでその助言と調理への知識を身に付けたいという願いから、瀬川さんは東京農業大学応用生物科学部栄養科学科に入学した。

調理師免許は取得後スクールで見識を広げる

「1日の早く調理師になりたい」と熱望していた瀬川さん。大学に入ってからアルバイト先として選んだのは、もちろん飲食店。大学付近にある定食屋チェーンの大戸屋だった。初めは厨房の調理からスタートしたが、最後のころにはレジ処理、フロアでの接客サービスなど業務全てを担うまでになった。その間にどうしても調理師の免許が欲しくて受験し、見事合格する。「大学を卒業すれば、栄養士の資格が取れるので、調理師の必要性は全くなかったのですが、私にとって調理師という資格は特別だったので、どうしても欲しかったのです」
そこには料理作り、調理に対しての、瀬川さんの並々ならぬ熱意がある。大学4年生になるころには、食についてさらに勉強したいという気持ちが一層強まった。また普段から食に関する情報をネットでチェックするのが習慣だったことから、フードコーディネーターを検索してジャパン・フードコーディネーター・スクール(JFCS)の情報に行き着いた。すぐに案内を取り寄せ、大学を卒業した春に入学。アルバイトをしながら、JFCSの授業に通った。

「JFCSでいろいろな授業を受けて視野が広がりました」

当初はフードビジネス・コーディネーターの仕事内容の幅広さに戸惑ってしまう感もあったという。しかし近い将来。料理研究家として著書を出版したり、テレビの料理番組で講師を務めたいと考えている瀬川さんにとって「食の番組をつくろう」というテーマの授業で、テレビ制作の現場を知ることができたのは、非常に大きい収穫であった。
さらにグループ単位で行う卒業制作発表では「アップルコンピューター社が飲食店を出店したら」というテーマの下にテイクアウトカフェの出店プランを発表。高い評価を得たが、同時に初期投資をはじめようとする投資回収の詰めの甘さを講師陣に指摘されるなど、実践に即した指導も得難いものだった。

インターン制度に応募し能力をフルに発揮する

スクールを卒業した瀬川さんは2005年の6月、雑誌で読んだくふ楽のインターンシップ制度に関心を持つ。この制度は、学生を主対象にした社外スタッフの登用制度で、スタッフはくふ楽の事業に大きく関与する案件を任される。例えば、瀬川さんが取り組んだプロジェクトはくふ楽の既存14店舗のグランドメニューの開発と食材仕入れのインフラ整備だった。当然、「そんな重要案件をインターンたちに任せてしまって大丈夫なのだろうか」という疑問も出てくるが、そこがくふ楽の福原裕一社長のユニークなところ。
インターンの作成し企画書は本部スタッフがサポートしながら形にしていく。フレッシュな発想のインターンに事業の一翼を担ってもらおうというもの。インターンとして採用された人間にとっても、一つの仕事を達成するまでの経験と達成感が大きな自信につながる。同社では、そのほかにも直営店から選出された成績優秀な店舗のアルバイトスタッフたちが「店舗経営改善活動」についてプレゼンテーションを行い、顧客を含めた参加者全員による投票で「最優秀てんぽBEST OF KUURAKU」を選ぶイベント「チャレンジシップアワーズ」なども年2回全店舗休業し実施している。

瀬川さんはまず、それまで各店それぞれが独自に組んでいたメニューと仕入れの取りまとめに着手。まずは既存のメニューの出数や需要、顧客の反応などを調べて分類し、レシピ化した。さらに、それまでの店舗ごとに行っていた食材の仕入れをウェブを活用した仕入れに変更。50社だった取引先を9社に絞り込むことにより、納品書や振込みなどの複雑な事務処理を簡素化させることができた。しかし、その時点では完全に統一させるまでに至らなかった。
「その時は最後までやり遂げたいという気持ちでした」と語る瀬川さんはインターンシップの仕事と並行し、くふ楽という組織に共感を覚え、魅力を感じ始めていた。それから程なく正式に採用。インターンをしたからといって必ずしも社員になれるわけでもなく、現場での仕事ぶりが評価された結果だった。

現在はメニュー開発を担当しつつ、日本酒の試飲会にも積極的に参加、フードだけでなくドリンクメニューの品揃えにも特徴づけをしていこうとしている。
「日本酒は個人的興味から始めたいのですが、最近はお客さまに満足していただきたいと試飲会などにも参加しています」
外食事業部を支える気鋭のスタッフとして、ほかにも食材の仕入先との価格交渉、グランドメニューの改定、POSレジの管理、ウェブの発信などに当たっている瀬川さんのくふ楽での役割は、日々大きなものとなっている。